EGOIST
遅刻ギリギリで教室に入ると、何故だか皆の視線がこちらに注目していた。

「真紅ッ!? 何で真紅が遅刻じゃねーんだよ!」

「やっべ~! 俺、遅刻に1000円賭けてたのに」

……つか、人で賭け事すんなって。

『あ、真紅!』

窓の外を見ていた涼が、今こちらに気付いたようで手を上げた。

『やべ~、俺も遅刻に賭けちゃったよ』

『お前なぁ……』

涼は苦笑しながら財布から2000円を出し、主催者らしき奴に渡す。

人の倍賭けてたんかい!

『まさか走って間に合ったわけじゃないよな?』

『まさか! 駅から単車で来たのさ』

フフンと鼻を鳴らし、自信満々に答えると涼は苦笑した。

『そういや1限の体育は体育館だってよ』

『ふーん……って、ジャージ!』

しまった。
ジャージを柚に貸したままだ。

『女子部は立入禁止だしなぁ……』

連絡先も聞いてないし。

しっかし、あの格好のまま行ってしまったなんて……
可愛いやつ。

仕方ない。
見学でもするか。

あっさりと諦め、席に座る。
と、同時に涼の携帯が音を立てた。

『……多恵だ』

突然のメールに不思議そうに見る涼。

『真紅。 俺、体育サボるから伝えといて』

『え? 俺もサボる予定だったのに』

涼は俺の言葉を聞いたかどうかも分からない様子で、教室を出ていった。

『だったらせめてジャージ貸してくれよ』

と呟いてみるが、当然届く事はなかった……

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