EGOIST
『お疲れ〜っした』

時刻は深夜の1時に近い頃。
店内の最奥にある部屋へと向かう。

それはHopeに来てからの習慣のようになっていた。

『真。 お疲れ』

途中会った涼が、そう言って手を上げる。

『帰んの?』

『いや、この後アフターなんで』

『……よぅやるわ』

べーっと舌を出し、涼を見送る。


ホスト仲間でも、少し噂になっている事がある。

涼が枕営業してる……とかね。



『入るよー』

最奥の部屋……改め、ここは凍司の個人部屋。

休憩したり、泊まったりしているようだ。

『涼の奴、またあの客とアフターだってよ』

ベッドに体を投げ出し、言う。

『あー、あの派手な人ね。 今日も来てたね』

『俺も昔、誘われたし。 ぜってぇヤッてるって』

以前、アフターに付き合った時の事だ。

いきなりシャツに手を入れて襲いかかってきたのだ。
何とか逃げ帰ったが、それからは指名が途絶えた。

『涼にも禁止だって伝えてあるんだけどなぁ』

『あいつが聞くタマかよ』

『だろうな』

別に俺には関係ないんだけどさ……
やっぱ涼の噂なんて、いい気分しないじゃん。

『ま、真紅に言われたくないだろうな。 涼も』

と、凍司は意地悪く笑ってみせた。

こいつには、一生敵わないだろうな。
一生使える弱みを握ってんだからさ。

『俺もう、好きな奴としかしないよ。 ちゃんとコレに誓ったんだから』

トントンと、鎖骨の下辺りをノックする。

血のように赤い深紅の薔薇。
二度と馬鹿な事をしないようにと、戒めに彫ったのだ。

『もう二度と……ね』

< 25 / 75 >

この作品をシェア

pagetop