EGOIST
『しまった……』
ずんずんと歩いてきてしまったが、鞄をマックに置き忘れてしまった。
財布は勿論だけど、心配なのは携帯。
待ち受け画面が……
『リョウとのプリクラなのよね……』
あいつが勝手に見ていたら、どうしよう。
絶対に馬鹿にされる……
不安が拭えないまま、学校へ向かう。
時刻は、7時半。
そうだ。
柚に頼んで、真紅くんに取り返してもらおう。
我ながらいい事を思いついたと、走る。
校門が見える。
誰にも会わないうちに柚に会わなきゃ!
と、焦る私の前に多恵がひょこっと姿を表した。
『おはよん、美里』
『お、おはよ』
『鞄忘れてったぞ〜』
……え?
『何で多恵が?』
動揺が隠せない。
まさか……
『俺が多恵に渡したんだよ』
『りょ……』
涼⁉︎
『何で多恵に?』
『多恵のアドレスしか知らないからな。 わざわざ待ち合わせたんだよ』
多恵の気持ち知ってるくせに。
なんて男なのよ。
『じゃあ、俺は行くから』
涼はふいっと向きを変え、男子部の校舎へと消えていく。
『……ごめん、多恵……』
『いいよ、鞄くらい! どうせ暇だったし』
そういう事じゃないんだけど……
『それより多恵、やっぱり涼が好きだなぁ!』
『へ?』
『本気で落としにかかるかな!』
多恵はぐっと拳を握り締め決意表明。
あまりの唐突さに、開いた口が閉じなかった……