EGOIST
透き通るような白い肌。

くりっくりのお目々。
長〜く、空に向かうまつ毛。

『うん! 今日もカワイイ!』

駅のトイレでも、念入りに化粧直し。

いつでも、どこでもある出会いに備えなきゃ。

時刻は、7時半。
そろそろ涼くん来るかなぁ……

いつもより早めの登校。
こうでもしなきゃ涼くんに会えないもんね。

最後のフェイスチェックに、手鏡を取り出す。

と、同時に見慣れた人影が通った。

『お、おはよう』

凍司くんだ。

『ああ…… おはよう』

何だか不思議そうな顔をして通る凍司くん。

まさか、多恵の顔覚えてないんじゃ……

『凍司くん。 誰だかわかってる?』

『あ、いや…… どなたでしたっけ』

やっぱり‼︎
こんな可愛い多恵を忘れるなんて!

『あははは! 凍司先輩、そりゃないよ〜』

と、そんなやり取りを見ていたのか、涼くんが笑いながら近づいてきた。

やったぁ。
朝から笑顔が見れちゃった。

『多恵だよ、凍司先輩』

『す、すまん』

凍司くんはバツの悪そうに笑うと、そそくさと中に入っていった。


さて、邪魔者は片付いたし……

『あのさ! 柚って涼くんの事「涼ちゃん」って呼んでるよね!』

今日の本題、本題!

『まぁ…… 昔のクセだな』

『多恵も呼んでいい?』

こんな事言ったら気持ちバレバレかな。
少し恥ずかしいけど、涼くんも嫌そうにしてないよね……?

恐る恐る顔を上げると、困惑した様子の涼くんが。

ヤバイ。
失敗したかも……

『あー……俺、呼び捨ての方がいいかな』

と、少しの間を開けて答える。

『え? 呼び捨てでいいの?』

『うん。 ちゃん付けなんて恥ずかしいしさ』

ニコッと笑う涼くんに体が熱くなるよ。

やっぱりいいなぁ……
この人。

もう本当に大好きだぁー……
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