EGOIST
帰り道のコンビニ。

『わ、かわいー……』

今日発売の雑誌を手に取り、パラパラっと開く。

着まわし術や、メイク特集。
女の子は本当に忙しい。

『多恵も頑張んなきゃ』

ポツリと声に出す。
それと同時だった。

『それ以上可愛くなって、どうすんのー?』

後ろから男の子にそう声をかけられたのは。

『真紅くん! 』

『もう十分可愛いのに、女子は大変なんだね』

さっきまで私が読んでいた雑誌を手に取り、中身を覗く。

『真紅くんにとっても、多恵って可愛いんだぁ』

『やぁー、普通に可愛いでしょ』

苦笑しながらの返答。
とか、何とか言って落ちないくせに。

『多恵と付き合ってみる?』

少し意地悪してやろうと、腕を絡める。

が、しかし。
予想外にも振り払われる事なく、逆に指を絡めるように手を繋いできた。

『柚さんが、こうだったら楽なんだけどなぁ〜』

と、一言。

『何それ〜』

『勿体無いけどね。 多恵ちゃんに手を出すと、柚に嫌われちゃう』

するっと離された手が、何だか淋しく感じた。

そんなに柚がいいんだ……

『柚が羨ましいな…… 多恵も大事にされたい』

いつも浮気されたり、飽きられたり。
いい事ないなぁ。

『一気に路線変更したら?』

『路線変更?』

『そっ! いっそのこと凍司みたいなガッチガチの堅物とか』

『え〜‼︎ やだぁ!』

だってあの人、多恵の顔を覚えてもいなかったし。

絶対ぜ〜ったいパス‼︎
< 36 / 75 >

この作品をシェア

pagetop