EGOIST
あれから1年……
まさか本当に柚に再開できるとは思ってもみなかった。

しかも、ホストと客の立場で……





放課後の生徒会室。

『涼、あまり美里ちゃんを虐めるなよ』

生徒会の資料をホッチキスで止める俺に、凍司先輩が言った。

『先に俺を嫌いだって言ったのは、美里だけどね』

『かも知れないけど』

凍司先輩は俺の座っている席に手を置いて上から見下ろすようにして話す。

それに少しのイラつきを覚え、俺は資料をバサッと置いた。

『んな事より、凍司先輩の方が管理不足なんじゃない?』

『管理不足?』

『そう。 高校生から契約印貰おうとしてる真紅を放っておくんでしょ?』

いつも感じてた。

凍司先輩は真紅を特別に扱う。
いくら中学からの馴染みだからといって、不平不満が出ないわけがない。

『例え高校生だとしても、契約は契約。 それは涼も認めただろう?』

『……じゃあ、真紅が誰かと契約したら俺はホスト辞める』

『りょ……』

凍司先輩の反対を掻き消すように俺は笑顔を作った。

『だって俺、真紅と違ってHopeにこだわってるわけじゃないから』

そう。
Hopeにいる理由なんてない。

何処の店だって、お金さえもらえれば生きていける……

『涼、それじゃお前の母親は……』

『だからぁ、俺は稼げれば何処だって構わないんだってば』

ホストと契約したって何もいい事なんて有りはしない。

真紅だって、柚を恋人として望んでいるわけじゃないだろう?

『そんなに彼女が心配なら、涼が契約すればいい』

『それは無理』

俺はまだ働かなくちゃいけない。
柚を巻き込めない。

本当は、自分の手で柚を幸せにしたいのに……
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