EGOIST
『あー、涼ちゃ……っ!』

『柚?』

帰り道、偶然にも駅で柚に会った。

走ってきたのか柚の顔は赤くほてった感じで赤ちゃんの人形みたい。

『りょ……涼くんは何番線?』

『柚と一緒だけど。 「涼くん」って何? いきなり……』

苦笑しながら言うと柚も同じように笑った。

『実は多恵から「涼ちゃん」って呼び方は恥ずかしいみたいだって聞いて』

『あー……』

そういやそんな会話したなぁ。

『柚が昔「自分だけが涼ちゃんって呼びたい」って言ったじゃん』

『えッ!? 私、そんなワガママだった?』

柚は顔を真っ赤にして手で顔を覆った。

可愛いよなぁ……

『柚は昔から我儘だらけで、お兄ちゃんは困りっぱなしでしたよ!』

『えぇ!? そんなに!?』

不安げに上目線で見る柚に、もう耐えきれず笑ってしまった。

『嘘だよ! 柚はいい子だよ!』

『う~…… 本当に?』

柚の我儘はいつも小さなワガママ。

【皆と違う呼び方がいいの】

【涼ちゃんは柚から離れちゃ駄目だから】

全て独占欲からくる可愛い我儘ばかり。

『俺には甘えていいんだからね?』

俺はもっと我儘だ。
俺は柚を幸せに出来ない。

わかっているのに……
この手を二度と離したくない……
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