EGOIST
放課後。

『ストロベリーとバニラのダブルで!』

『私、ブルーハワイ』

『多恵は、チョコがいいなッ!』

3人で駅前のアイス屋さんに来ていた。

『ねぇねぇ、結局、痴漢ってどうなったの~?』

またまた多恵から痴漢の話題。
軽くスルーして……

『多恵こそ男子部の子…… えっと、トモくんだっけ? あの人とどう?』

さりげなく話題を変えると、多恵は顔を赤くしてキャーキャーと騒ぎ出した。

『もう超カッコイイの!! 優しいし~、楽しいし~!』

多恵の彼氏は同じ学校の同級生。

だけど、私達の通う高校は一風変わっている。

男子部、女子部と校舎が違うの。
2つの学部を繋ぐのは渡り廊下だけ。

昔は女子高、男子校と全く別の高校で、合併した今も以前の名残で男女別になっている。

しかも男子部の人間は女子部に立入禁止。

女子部の人間は禁止されていないのに男子校舎に近づこうとしない。

アチラは猛獣の巣……
男子校で育った飢えた野獣と化している……という噂。

そんなわけで多恵の彼氏のトモくんを、私は一度も見た事がなかった。

多恵の彼氏だもん。
きっとキラキラした人なんだろうな。

そう思ったその時。
1組のカップルが私達の前を横切った。

少し軽そうに見えるギャル子さんとギャル男くんのカップル。


『ねぇ、多恵の彼氏ってあんな感じ?』

美里が冗談混じりでカップルを指差す。
ほんの冗談のつもり……だったんだろう。

『と、トモくん……』

『………はッ!? マジで本人!?』

まさかのドンピシャで美里は大声で驚いてた。

『美里すごーい!』

さすが美里!


『ちょっとトモくん!! 何なのその女は!!』

多恵はアイスを私に押し付けるように渡して、カップルの前に飛び出した。

わ、わ、わ、修羅場だ!

『人の男に手ぇ出さなぃでよ!!』

『ちょッ 、トモ~、どういう事?』

『い、いや、そのぉ……』

トモくんは頭をガシガシかいて苦笑してるし。

『トモくん!!』『トモ!?』

多恵とギャル子さんは、詰め寄ってるし。

『……ごめん…… 2人とも浮気相手……なんだ』

……えぇ!?

そんなトモくんの発言に怒ったのは、多恵でもなくギャル子さんでもなく。

もちろん私でもなく……

美里だった。

『あんたね! 多恵は軽く見えても、実際は違うんだから!! 浮気相手にするなんてどーゆうつもりよ!?』

美里の怒りはいつまで経っても収まらず、少しずつ溶け出したアイスがアスファルトに落ちた……
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