EGOIST
ここは駅前のマック。

『ゆ……遊園地?』

『そぅ! 口止めに遊園地連れてってよ!』

多恵ちゃんの突然の発言に驚いたのは俺だけじゃないはず。

『ホストと遊園地なんて滅多に行けるもんじゃないでしょ? 口止めにぴ~ったりじゃない?』

意地悪に笑う多恵ちゃん。

そんな多恵ちゃんに1番に返事を返したのは涼だった。

『俺は遊園地って苦手。 つか乗り物全般、駄目だし』

『え~!! 涼が行かなきゃつまんないよ!』

プゥっと膨らむ多恵ちゃんに涼は呆れたように溜め息をついた。

何だかんだコンビとしては合ってそうなのにな。

仕方ないな。
助け舟を出してやるか。

『俺は遊園地に賛成。 久々に涼の悲鳴聞きたいし?』

ニシシと意地悪な笑みを含み涼の肩をポンッと叩く。

『性格悪いなお前』

『今さら? 凍司は絶叫、大丈夫?』

『俺は……平気だ』

どこと無く目が泳いでいるような……
そう思ったけど、とりあえず気のせいという事にした。

『じゃあ、多数決で遊園地に決定ねっ!』

満面の笑みで手帳に遊園地と書き込む多恵ちゃん。
書き込んだ日付は……

『明後日!?』

そう、明後日の日曜日だった。

『マジか~、給料日じゃんかよ』

『そうなの~? ちょうどいいじゃん!』

『多恵ちゃん違うんだよ~! その日の夜に貰えるんだよ~』

『……あッ そっか!!』

多恵ちゃんはようやく気付いたようで俺の胸をポンと押した。
そんなわけで一番貧乏な日になってしまうわけだ。

そんなやり取りを黙って聞いていた涼が突然、笑い出す。

『何だよ急に』

『いやね、せっかく凍司先輩も行くんだから給料の先払いを頼みたいな~って』

涼の言葉に、ハッとして凍司を見る。
凍司はその視線に呆れて溜め息をついた。

『1日早いだけだしな…… 土曜日に払うよ』

『やったぁ!』

喜ぶ俺たちの様子を柚達3人はぽかんとして見ていた。

そっかそっか。
説明した事なかったな。

『何で凍司くんにお給料を頼むの?』

不思議そうな顔をする柚。

『凍司は次期オーナーだからね! じゃなきゃ俺達が年齢を隠し通せるわけないし』

『お、オーナー!?』

あまりの衝撃に、3人から悲鳴に似た声が上がる。

『と、凍司くんって凄い人なんだね……』

背筋をピンと張って言う柚。

『まさか! 父親がたまたまホストクラブを経営していただけだよ』

その様子が何だか可愛くて笑ってしまった……
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