EGOIST
【ねー凍司。 契約した女が許してくれるんなら、店に出てもいいんだよね?】

【そうだなぁ…… 大半が通い夫みたくなって店には来ないけどな】

【俺は見つけるよ。 そういういい女を】

【見つかるかな……?】

凍司がそう言って悲しそうに笑ったから、
だから今まで契約なんてしなかった……

だけど、俺はもうホストとして続けていきたいとは思えない。
「あの夜」以来、客の前に立つ度に恐怖心が訪れる。

俺や涼を含め、ここのホストは契約をしてしまうと、他の客の指名を取れない。
簡単に言ってしまえば、ただのウェイターみたいなもんだ。

だから早く契約したい。


でも見ず知らずの心無い女に独占されてしまえば、そっちの都合で呼ばれ、そっちの都合で帰らされる。

一時の金で、そうされて堕ちていく人を嫌という程見てきた。


それじゃ駄目なんだ。
俺は凍司や涼の傍で、笑いあって過ごしていきたいんだ。

『柚ならさ…… 何か理解してくれそうなんだよ……』

よくわかんねーけど……

一緒に笑ったり泣いたり、凍司が困った時なんか、
「早く行け」って背中押してくれそうだったんだよ……
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