EGOIST
午前10時。
待ち合わせの時刻まで後、1時間。

《ぴんぽーん》

突然、家の中にインターホンが鳴り響く。

誰だろう。
こんな朝に。

不審に思いながら扉の覗き穴から覗く。
すると、そこには……

『涼ちゃんっ!』

涼ちゃんが立っていた。

『どうしたの? こんな朝早くに』

がチャッと扉を開け、中に招き入れる。

『いや、ジャンケンに負けたからさ…… せめて朝くらい一緒に行こうと思って』

ジャンケン?

『上がっていい?』

『どーぞ、どーぞ! 多恵と美里もいるよ!』

涼ちゃんにスリッパを出して中に案内した。

『あ~、涼!!』

突然の訪問者に、中でお菓子を食べていた多恵が声を上げる。

涼ちゃんは苦笑して、同じように床に座った。

『ねぇねぇッ! 涼にお願いがあるんだけど!』

『うん? 何?』

『遊園地、私と一緒に回ろ!』

涼ちゃんの腕にしがみつく多恵。

ま、大胆!

涼ちゃんはチラリと美里を見て笑う。

『良かった…… 可愛い方で』

『丸聞こえだっての!』

美里はバッと立ち上がり、涼ちゃんにお菓子を投げ付ける。

『涼ちゃん! 美里は美人で有名なんだよ!』

『へ~、ほ~…… この凶暴女がねぇ……』

完全に疑惑の目を向ける涼ちゃん。

もう!
すぐ美里に意地悪するんだから!


『んな事より懐かしいなぁ~。 柚の家』

と、突然話題を変えられる。

『涼ちゃんいつもベランダから来たよね!』

毎日のように行き来した部屋……

懐かしいな。
いつも涼ちゃんが傍にいたっけ。


『ねぇ、柚? 真紅と俺、どっちが好き?』

涼ちゃんはベランダの扉を開けて外に出る。

あれ?
背が伸びたせいか、あの頃涼ちゃんと見た風景とは少し違って見えた。

涼ちゃんから見たらもっと違うんだろうな……

『真紅は、まだ知り合ったばかりだよ?』

『んじゃ俺の事、好き?』

涼ちゃん、何を言ってるんだろう。

『好きに決まってるよ!』

私が涼ちゃんを好きじゃないなんて事、
絶対にないのに……
< 47 / 75 >

この作品をシェア

pagetop