EGOIST
『ウッ……ヒック!! ひどいよ~!』

多恵は顔をクシャクシャにして泣き続けた。

私が指差したのがマズかったなぁ……
美里が、そう言いたそうな顔をしながら多恵の涙をハンカチで拭う。

『多恵! あんな男なんて忘れて新しく出会い探そう!?』

私はもう、とにかく多恵を励まさなきゃ!って必死。

それを知ってか知らずか、急に多恵が首を上げて、にぃ~っと笑う。

……嫌な予感。

『柚ッ、新しい出会いを一緒に探してくれる!?』

『ぇ゙……』

嘘泣きだったのではないか、と思わせる満面の笑み。

『それは…… 応援くらいするよ?』

『も~ぉッ! 柚って最高っ!!』

多恵はガバッと首に巻き付き、そのまま強引に歩みを進めた。

行きついた先は……何だか見慣れないブティック。

みッ、美里ぉ~!!!

声にならない声で助けを求める私の目に、深く溜め息をつく美里が見えた……




『あの…… これは……』

多恵の手によって、まるで着せ替え人形のように服を着せられる。

胸元の開いた派手な服や普段履かないようなタイトスカート。

どうしてこんな事に?

『だって新しい出会いを探すんでしょ?』

『『え……?』』

つい美里と声を合わせてしまった、その時、
多恵はに~っと笑って小声で言った。

『3人でぇ~、ホストクラブ行こう!』

『ほ、ホストぉ~!?』

『声大っきいよ!! やっぱ失恋の傷を癒すのは、男の子だと思うんだぁ』

『た、多恵ぇ~……』

さすが多恵だ。
ここまで立ち直りが早いと感心しちゃうよ……





そして、日は沈み……
目が潰れてしまいそうな位、ピカピカと眩しいネオン街へ。

『ここだよ! 皆が美少年ばっかって言うから一度来てみたかったんだぁ!』

多恵は楽しそうに一際目立つピンク色のお店を指差した。

『多恵~…… やっぱ駄目だよ。 私達は未成年だし』

そんな風景に不安になって、多恵の腕を必死に掴む。

『美里は、どうする~?』

『私は行くよ』

『さっすが美里ぉッ!』

『でも、私は多恵が馬鹿な事しないように監視しに行くのよ?』

美里は多恵をキッと睨むとお店のドアを力強く開けた。

『わ、私は行かないから! 警察に捕まったら嫌だもん!』

『じゃあ、柚はそこで待っててねん!』

『え、あ……うん……』

やけにあっさり解放された事に拍子抜け。

仕方なしにベンチに座って2人を待つことにした……
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