EGOIST
小学生の頃だった
初めてお化け屋敷に入ったのは。

真っ暗な空間に冷えた空気。
不意になる音。

怖くて怖くて、先には進めなかった……



『た、多恵は、やっぱ外で待ってる~』

『多恵~、俺の好きな事も知ってくれるんでしょ?』

涼は意地悪に笑うと私の手を引いてお化け屋敷に入ろうとする。

人生で二度目のお化け屋敷。
小学生の頃は係員に手を引かれ、入口に戻ったのだ。

『俺がずっと手繋いでるから』

『涼……』

そうだよね……
もう高校生。

きっと涼となら入れる……よね?



お化け屋敷の中は暗く一定の感覚で置いてある提灯の明かりだけが通路を照らしている。

目をつむっていても感じる冷気。
音、気配。

もう駄目……

『多恵? 生きてる?』

『…ック…ヒック…恐ぃ……』

『え!? 泣いてんの!?』

肩をガッと掴まれ、涼が覗きこむ。

『無理ぃ……怖いよぉ』

止まらない涙。
オロオロする涼。

そんな時……

『女を置いていけぇ~!!』

恐ろしく低い声が後ろから響き、冷たい手が私の首を絞めた。

や、や、や…

『やぁ゙~~!!!!』

あまりの恐怖に咄嗟にお化けに殴り掛かり、猛スピードで出口へと走った。

心に決めたのだ。
もう二度と、誰がいようと、お化け屋敷には入らないと……
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