EGOIST
【枕営業嫌ってんの知ってて言ってる?】

真紅を何度羨ましいと思っただろう。

嫌いだから止める。
嫌だからしない。

それが通用する真紅が羨ましい。




『すみません、夢野恭子の家族のものですけど』

『面会ですね。 少しお待ちください』

看護婦が連絡をとる間、待ち合い室に座ると隣に小さな女の子が座った。

『お兄ちゃん、おはよう!』

お見舞いに行く度に会う女の子。

彼女は美香ちゃんといって入退院を繰り返し、会う回数が増える度に話す口数も増した。

『お兄ちゃん今日はスーツなんだね!』

『うん、カッコイイ?』

『うん! パパみたい!』

……きっとパパはサラリーマンなんだろうけど。

子供には違いなんかわかんないか。

『夢野さん、面会の許可が出ましたので……』

『あ、はい!』

看護婦に呼ばれ立ち上がると美香ちゃんも同じように立ち上がる。

『後で美香の部屋にも来てね?』

寂しそうに言う美香ちゃんの頭を撫でてニッと笑う。

『ちゃんと部屋で待っててね?』

『うん!!』

学校にも通いたいだろう。
公園で遊びたいだろう。

これほどまで彼女が気になるのは自分に似てるから?

自由に動けない所が……かな。



病室に入ると白いテーブルの上には紙切れが置いてあった。

『請求書か』

普通の高校生には払えない額。
母さんの顔を見ると真っ白な顔で目を閉じていた。

それが俺には妙に不安げに見えた。

『大丈夫だよ。 今月もいっぱい働いてきたからさ』

客と寝るのには、もう慣れた。
罪悪感もない。

別に……
援助交際してるよりマシでしょ?


『……早く目ぇ覚めるといいね?』

こんな事で母さんを救えるなら、そんな軽い事はない……
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