EGOIST
『もぉ~、おっそ~い』

一体、中で何してんの!

多恵と美里が中に入ってからもう15分。
さすがに退屈になってしまった。

そんな時……

『カーノジョ! こんなとこで何してんのぉ?』

『1人なら俺達と遊びましょっ!』

今風の男の子達が私の前に立ち止まった。
まるで逃げ道を無くすかのように……

遊ぶって……
遊園地くらいじゃ済まないよねぇ~?

『わ、私、友達を待ってるので』

『友達って女の子ぉ? 一緒に待ってていい?』

よ、良くない、良くないです!
でも何か少しずつ距離を詰めてきて……怖い。


と、その時……

『お兄さ~ん、ナンパは他でやってくれる?』

突然、男の子達の後ろから誰かが近づいてくる。

『こいつ、俺の連れなんだよね』

恐る恐る顔を上げた私は、目を疑った。

キラキラの金髪の綺麗な男の人。
スーツを着崩した服装。

真っ赤なワイシャツから見える鎖骨の下には小さなタトゥー……

本物の……ホストだ……

『てめぇッ!!』

二人組の男は彼に殴り掛かろうと、拳を振り上げる。

『危ないッ!!!《バシッ》

軽快な音と同時に男の腕は彼に捩じ伏せられる。

強い。

『顔は狙わないでほしいなぁ? 商売道具なんだからさ』

『おッ……覚えてろよ!!』

男達はお決まりの捨て台詞を残して、すたこらと逃げていった。


『大丈夫?』

『は、はい!! ありがとうございました!』

すごく綺麗な人だ。
金髪がよく似合ってる。

『こんな所にいたら、ナンパ待ちだと思われるよ? 早く帰らなきゃ』

『でも…… 中に友達が』

『中? って、Hopeの中?』

『ホープ……?』

『Beacon of Hope。 この店の名前だよ!』

Beacon of Hope……
希望の……光?

『まぁ、それなら中に入った方が安全だと思うけどな』

どうしよう。
怖い人いないかな。

『悩んでるなら俺を指名しなよ』

『え?』

『入ったらすぐに、「真(シン)」と約束してるって言えばいいし』

本当に大丈夫かな?
優しそうな人に見えるけど……

『うん…… 私、入ります!』

『決まりね! んじゃ俺は先に入って待ってます!』

『はい!!』

大丈夫、大丈夫。
多恵達だって入っていったんだから!

不安に思う気持ちに言い聞かせながら、静かに扉に手をかけた。。
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