EGOIST
『少し話して帰ろっか』

真紅がそう言ったから、駅前のコンビニで適当におやつを入手した。
言われるままにベンチにも座った。

『夏休みはどうすんの?』

『美里と多恵と海に行くよ』

促されるように話もする。


うん。
何だか上手に流されてる感じ。

でも嫌じゃない。

『俺、海って行った事ないんだよね』

『えぇ!? 意外!』

『家庭の事情でさ。 俺1人が遊んでられねーの』

家庭の事情……?

『それって……』

《~♪~♪》

口を開くと同時に私の携帯が鳴った。

『……涼ちゃんだ。 もしもーし!』

《今、何処にいる? 渡したいもんあんだけどさ》

『駅前のコンビニ!』

そう答えると涼ちゃんは「すぐ行く」と電話を切った。

『涼?』

『うん。 すぐ来るって』

『は~? 邪魔かよ』

真紅はそう言ってべーっと舌を出す。

きっと仲が良いから出来るんだなって、微笑ましいと思った。



そして3分後……

『『早っ!!』』

あまりに早い登場に驚く。

『俺も駅にいたから。 つか何で真紅まで?』

『電話の前からいたっつの~』

いつもの意地悪な笑顔だ。

『まぁ、いいや。 美里にこれ渡してくれない?』

涼はポンッと鞄を投げる。

『これ美里の鞄なの? 何で涼ちゃんが?』

『さっき電車内で投げ付けられた。 新着メールあるからって伝えて』

『え? お前、人の携帯見たの?』

『いや、俺がメール入れたから』

涼ちゃんはバツの悪そうに笑うと足早に駅へ戻っていった。


涼ちゃんが去った後で真紅と顔を見合わせた。

あ、きっと同じ事思ってる。

『俺、痒いとこに手が届かないような感じ』

『私も! 受験結果の発表前みたいな気分』

やっぱり思っている事はまさに同じ。

『すっげぇ、メールが気になる!!』

『私もっ!!』

涼ちゃんが美里へ送信したメール
それがすごく気になる。

『でも読んだら美里怒るよ!』

『俺だって涼に殺される!』

『『う~!!』』

しばらく二人で唸った後で同時に溜め息をついた。

『私が持ち帰ったら見ちゃいそう。 真紅が預かってくれる?』

『駄目だよ…… 俺、受け取った瞬間に読みそう』

似た者同士だもん。
気になるものは仕方がないよね?

かといって美里の携帯がここにある以上、美里と連絡はとれないし。

『……第三者に渡そう』

うん。
それが一番安心だよね!
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