EGOIST

MISATO

柚からキスの話を聞いた時。
真っ先に浮かんだのは、あいつの顔だった。

『今一番あんたの顔見たくなかったわ』

下校時刻が一緒のせいか。
運悪く涼と一緒の電車になってしまった。

『何だよ、感じわりぃな』

涼は、苦笑しながら目の前に座る。

『あっちに座ってくれる? 友達だと思われるじゃない』

『は? お前が車両移れよ』

多恵にも柚にもニコニコしてるくせに。
この裏表にはびっくりだわ。

『美里さぁ…… 俺にリョウを重ねてんだろ』

『……え?』

『彼氏のリョウ。 名前が一緒で笑ったわ』

何でリョウの事?
まさか……

『私の携帯…… 前に覗いたの?』

『あんな泣きそうな笑顔の待ち受けじゃ誰でも気になるわ』

嘲笑うような笑顔。
その笑顔に頭の中が沸騰しそうな程、腹がたった。

気が付いた時には遅かった。
手に持っていた鞄は涼の顔面へ。

『最低』

涙が出そうになるのを必死に堪える。

『俺が最低なら美里は何なの?』

『え……?』

『リサと幸せになって。 私は大丈夫だから』

……それって……

『とんだ偽善者。 本当は俺に当たるくらい腹が立ってるくせに』

『……メールまで見たの?』

私の問いかけに涼はべーと舌を出して笑った。

最低!
嫌い、嫌い、大嫌い!

『もう二度と話しかけないで!!』

涙が零れる前にと、開いた扉から飛び出していた。
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