EGOIST
『お疲れ。 すっぽかさず来たな』

24時間なんてあっと言う間に来てしまう。
今日ほど、そう実感した日はなかった。

『もう一度言っておくわ。 メール見るなんて最低』

前はカッとしてしまったけど、やっぱり涼がおかしい。

『実際見たのは美里の未送信メールだけだけどね』

『本当最低だわ』

『あはは! ごめんって』

頭をぽんっと撫で涼が笑う。


未送信メール。
それはリョウに対して打ったものだ。

【リサと幸せになって】

そう打っただけで涙が滲み、送信は出来なかった。


『私とリョウとリサって子は親友だったの』

『へぇ。 中学の?』

『うん。 でも私だけ高校が別で……』

きっとそれだけが理由ではないけど、いつしかリョウはリサに惹かれていった。
そしてリサも……

『もう二人が両想いって解ってるのよ。 自分が邪魔だって事も』

でも、二人を失うようで手が離せなかった。

『気づけたわ。 自分が嫌な女だって』

悔しいけど、背中を押したのは涼だ。

『フラれるなんて認めたくなくて…… だから自分から別れようとメールを作ったのね』

本当、偽善者だ。

『どうする? 俺の事、新しい彼氏って言っとく?』

『あは、自ら悪者になるのもいいかな』

二人が遠慮しなくなる位の悪者に……

『それとも罵声でも浴びせちゃう?』

『できるかなぁ?』

『でもまぁ、そんな事しなくて大丈夫でしょ』

並んで歩いていても、涼の方が背が高いから表情は見えない。
どんな顔をして言っているんだろう。

『親友なんだからさ、会えば解決するよ』

声はとても穏やかだけど……
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