EGOIST
『ありがとね』

リョウ達が去った後、悔しいからボソッと言った。

『どういたしまして』

あ、すごい満面の笑み。

『あんたも普通に笑うのね』

今まで壁を作るような笑顔しか見た事なかったのに。

『そりゃ笑うっしょ。 あんなクサい台詞聞いたら』

……やっぱ最低だわ。

呆れてベンチにドスッと腰を下ろす。

『ねぇ、美里』

『うん?』

『お礼は?』

同じようにベンチに腰掛け涼が言った。

『……何が欲しいのよ』

確かに助かったし、安い物ならいいけど。

『名前で呼んでよ』

意地悪な顔をして髪に触れる。

正直どきっとした……
急に男になるから……

『いつも「あんた」って言うから気になってた』

『それは……』

『もうリョウと被んないじゃん』

段々と距離を詰められ、逃げ場がない。

『ほら、お礼でしょ?』

『……りょ……』

『うん?』

『…………涼』

声が裏返る。
名前を呼ぶくらいで、こんなに恥ずかしいなんて。

って……え?

『あ、ちょ……っ』

思ったよりも顔の距離が縮まって、鼻先が振れる。

キス……されるかと思った……

『ヤバいな…… 流されてキスしそうになった』

と、眉間にシワを寄せる涼。

私の勘違いではなかった。
確かにキスの雰囲気を感じたのだ。

『俺、ツンデレとか許容できないのに』

……って、

『誰がツンデレよ‼︎』

本当、失礼で最低なやつ!
< 68 / 75 >

この作品をシェア

pagetop