EGOIST
『いらっしゃいませ、お姫様!』

お、お、お姫様ぁ!?

スーツを格好よく着こなした男の人が、私の手を引いて奥へ導いてくれる。

すごい。
仕事熱心でロボットみたい。

『初めてでいらっしゃいますか?』

『は、はい!! でも……友達が中にいます』

『かしこまりました。 案内いたします』

そのまま手を引かれ、2人席へ案内される。

席では2人のホストが盛り上げようと頑張っているのを、多恵はキャーキャー喜び、美里は冷ややかな視線を送っていた。

『美里、多恵! 私も来ちゃった』

ずいっと2人の間を割って入る。

それと同時に多恵がホスト達の紹介を始めた。

『こちらが司(ツカサ)くん!』

司くんは優しく微笑むと「よろしく」と一言。

シャープな輪郭に切れ長の目。
グレイのスーツがよく似合う。

『そしてこちらが涼(リョウ)くん』

涼くんは頭を下げて「どうも」と素っ気なく。

あれ?
この顔どこかで……

『ゆ……っ』

目が合ったと思った瞬間、涼くんは目を見開いて声を漏らした。

と、その時、多恵が耳元で囁いた。

『多恵は、涼くん狙いで~す』

た、多恵!?
相手はホストだよ!

お仕事なんだよ~!?

『数が合わないから足そうか。 柚さんはどんな人がいい?』

司くんがニッコリ笑いながら言う。

『あ、真って人と約束が……』

『真? 今日、彼は来てないみたいだけど』

あ、そっか。
さっきお店に入ったばかりで、準備中かも。

と、突然。

『悪い悪い! 寝坊しちゃってさぁ』

後ろから声がして振り向くと、さっき助けてくれた彼が……

『真! お客様の前でそんなッ!!』

真の態度に怒る司くん。

『いつもながら司は真面目ねぇ~』

そんな司くんの怒りに油を注ぐように、茶化す真くん。

真くんは私を見つけるとニッと笑った。

『よっ、さっきぶり』

『はい! さっきはありがとうございました』

やっぱり少しでも知った顔だからか、真くんの顔を見たらホッとしたよ。


『まぁ、真打ちも到着って事で乾杯といきますか』

それに、すごく優しく笑うからかも。

『Beacon Of Hopeへようこそ、お姫様方』

素敵な夜が始まる予感……
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