EGOIST
『え~! 絶対に無理なの?』

今日もまた同じように多恵が来る。
そしてまた同じように涼が身をかわす。

『でも真紅くん誘っちゃったも~ん。 涼が柚の水着姿、真紅くんに独り占めされてもいいんだぁ~』

しかし今日は多恵が上手のようだ。

涼の気持ちを知ってか知らずか揺さぶりをかけていく。

『……わかったよ…… 真紅が行くなら行くよ』

そしてついに不落の城を落したのだ。


『本当に凄いな君は』

涼が走り去った後。
多恵にそう声を掛ける。

『遠慮なんかして、後で後悔したくないんだ』

多恵はそう言って満面の笑みを見せる。

『凍司は? 好きな人いないの?』

と、突然前に立ちふさがるようにして多恵が言った。

『……って呼び捨て』

仮にも先輩だぞ、俺は。

『硬い事言わないの! それで? 好きな人いないの?』

唇に指を立て意地悪に笑う。

そうか。
やっと気づいた。

『君は真紅に似てる』

『え~?』

憎らしい。
けど放っておけない。

『何だか気になるよ』

嫌いな人種ではないんだろう。

と、多恵の顔を見ると茹でタコのように真っ赤。

『凍司って、天然のたらしだね』

『は?』

何なんだそれ。
全く意味不明だな。
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