EGOIST

SHINKU

「真紅くん、海行きたいよね?」

多恵ちゃんにそう言われた時、少し嬉しかった。

少しだけ想像してしまったんだ。
6人で楽しく遊ぶ所を……


『多恵ってば強引でごめんね?』

多恵ちゃんと別れた後だ。
柚がそう言って頭を下げたのは。

『いやいや、俺も行けるように頑張ってみるよ』

そんな姿が可愛くて、海になんて行かせたくないな。

『ばあちゃんにお願いしてみっかな』

と言っても、この間遊園地でも頼んだから申し訳ない気持ちもある。
しかも出掛ける時間になって一番下が泣き出して大変だったしな……

『お母さんは?』

柚はきょとんとして言った。

『親父が海外に単身赴任でさぁ。 そっちについてっちゃったよ』

『そ、そうなんだ』

『まだ新婚気分だから許してやって』

小さな頭をぽんぽんと撫で笑顔を見せる。

『新婚?』

あ、そっか。
柚に言った事なかったっけ。

『俺んち7年前に再婚してんのよ。 俺母さんの連れ子でさ』

『そうなの?』

『うん。 そっから頑張っちゃって5人も作っちゃってさ』

確かに弟が出来て嬉しかったけどさぁ……
産みすぎだろって思うよ。

『あ、見に来る? 今からお迎えいくよ』

『え? いいの!?』

半分冗談のつもりだったのに、あまりに反応がいいから少し驚いた。

今までの女の子達は、あまり興味がなさそうだったから。

『柚がいいなら遊びにおいでよ』

『うん!』

確かに顔は可愛い。
でもそれ以上に俺は、こういう所に惹かれたんだろう……
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