EGOIST
時刻は夜の12時。

店内は気付かぬうちに満席になっていた。

『へ~、じゃあ柚ちゃん達は高校生なんだぁ?』

『すみません…… 本当は高校生なんて駄目ですよね?』

『まぁ、入っちゃったのは仕方ないよ』

司くんは優しい笑みを浮かべ、私の頭を撫でる。

優しい人だぁ……



と思ったのもつかの間、やっぱりお店の外に出されてしまった。


『柚が余計な事、言うからぁ~!』

『ご、ごめん……』

半泣きの多恵に頭を下げる。
美里はまたもや、呆れて溜め息をついていた。

と、その時。
お店の外に金髪のホスト……

いや、真くんが。

『ごめんね? 追い出す形になって』

『ううん! 私達が悪いから』

ブンブンと横に首を振る。

『高校生だろうなぁと思ったけど、司にバレなきゃいけるかと思って』

『ち、違うよ! 真くんは全然悪くない』

真くんを安心させるよう、もっともっと首を振って否定する。

『あはは! カラクリ人形みてぇ』

『え? か……カラクリ!?』

腹を抱えて笑う真くん。

そんな予想外な事に、思わず顔がカァーっと熱くなる。

『あんた可愛いね。 ここ以外でまた会えたらいいな』

『う、うん……』

『んじゃ、会えたら絶対に声掛けてな』

真くんは、笑顔で手を振ると店内へ戻っていった。





『真、高校生から契約印もらおうなんて思うなよ?』

店内へ入る真に、司がすれ違いざまに言う。

『ババアの印だろうが、ガキの印だろうが契約は契約だろ? なぁ、涼』

真は不敵に笑うと、涼の肩に手を回した。

『真に賛成。 だけど……』

キッと睨んで手を叩き落とす涼。

『柚以外にもらってこいよ』

『……柚?』

『悪いけど、柚は巻き込むな』

涼はそれだけ言い残すと、テーブルへ戻っていった。



私達が帰った後に、そんなやり取りがされてるなんて……

この時の私達には、知る由もなかった。
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