徒花のリーベスリート
 物心ついてからずっと、ずっとずっと、私は彼をみつめてきた。
 いつも優しくて落ち着いた雰囲気の彼に、燃える様な恋心を抱いた。


 ねえ、お願い。
 ほんの一瞬だけでもいい。
 私を見て。
 私に気付いて。
 ずっと側に居て。
 私にはあなたが必要なの。


 そう願って泣いた夜は数えきれない。
 勇気を振り絞って直接想いを打ち明けたこともある。
 あなたのことが好きだと。慕っていると。
 けれど、彼はいつだって困った顔で微笑むばかりで、頷いてくれたことは一度も無い。
 彼にとって私はあくまでも友人であり、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
 それでも私は構わなかった。
 側に居られるだけで幸せだった。
 もしかしたら、頑張ればいつかこの想いが届くかもしれない。
 友達以上の存在として見てくれる日が来るかもしれないと、一縷の望みを抱いて可能性にしがみついた。

 しかし、彼の態度は何年たっても変わる事なく、結局最後まで私を選んではくれなかった。
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