糖度∞%の愛【改訂版】

唇がむぎゅっとタコみたいになって、今の私は相当不細工になっているはずだ。それでも彼方は、そんな私の顔を見てもクスリとも笑わないで、本気で怒っていた。


「……か、かなた?」


頬を両側から挟まれているせいでうまく発音できない私に、彼方の怒声が飛んでくる。


「風邪ひいたらどうするんですか!? ただの風邪だって、沙織には致命的になることだってあるんですよ?!」

「っ」


彼方の、どこまでも私を想う言葉に胸が詰まる。

そう、体調を崩したり、風邪をひいたりしただけで、血糖は不安定になる。
食べ物が食べれなくなれば、その分インスリンも減らさなくちゃいけない。
風邪などをひいた日、つまりシックデイには、血糖の変動に十分注意しなくちゃいし、コントロールが難しい。

それに、血糖は食べ物だけではなく、女の子特有の月のモノや、精神的なことでも上がったり下がったりする。
彼方はそれを教えなくても独学で知っていた。

そうやって、知らないところでどんどん私の病気を知ろうとしてくれている彼方。それは私の身体を思いやってくれているからこそだ。それなのに、肝心の私が彼方の想いを、私はないがしろにするように、寒さに耐えてまでもコートを着ていなかった。
彼方に心配をかけたくない。自分だけでなんとかしたい。
それでも、こんなに自分を想ってくれている彼方に、思わず現状を吐露しそうになった時、


「年上の意地とか言ってる場合じゃないでしょう!? そこは素直に俺に頼るべきでしょうが!」


彼方の叫びに、唖然とした。

……真帆め、しゃべったな。

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