糖度∞%の愛【改訂版】

朝出社すると、いつものようにロッカーにはメモ帳。
昨日私が帰ったとに貼ったのか、それとも朝早くにわざわざ来て貼ったのか。いつものようにカリカリと爪で剥がしにかかる。


「“午後には”って言ってたもんね」


ふと、昨日のことを思いだしてしまって、つい口元が緩んでしまう。口元を引き締めながら、剥がし終えたメモをボックスの中にしまう。

昨日のコートは、『善処してみますが期待はしないでください』と、クリーニング店から言われてしまうほどの有様だった。一緒についてきた彼方が、『もし落ちないようなら、俺がプレゼントしますよ』と言ってくれたから、『じゃあその時はお願い』なんて笑って見せたけれど。
やっぱり私は真帆からもらったあのコートがよかった。完全には落ちなくても、着れるようならまだ着るつもりだ。
どっちにしろ、今日真帆に会ったら謝っておこう。よし、と気合を入れて部署へと向かった。


部署内に入ると、すでに出社していた人たちが一斉に私を見てきた。

え? なに?
そんなに見られても、私にはワケが分からない。一体私は何をした?

目を白黒させて、その視線に居心地が悪くなるしかない。それに追い打ちをかけるように、様々な視線が注がれる。
理由を聞こうにも、真帆はまだ出社していない。彼方のデスクには、鞄はあるものの姿が見えない。

とりあえず、何でもないような顔して、デスクに座ってパソコンを立ち上げる。
毎朝出社すると、社員は必ず社内メールに目を通すことになっているのだ。
社内メールは、昨日の社の出来事やランチの感想など幅広い情報が載っている。社内新聞のようなもので、今朝の分を読み進めて行くうちに、ある一点で私はピシリと音を立てて固まった。
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