糖度∞%の愛【改訂版】

「顔よし頭よし性格よし、長身で出世街道まっしぐら。 世間で言う三高以上の有望株を、彼氏に持つ心境はどうですか?美崎さん」

箸をマイクの様にもって、リポーターばりに私の口元に突きつける。でもその目は笑っているようで笑っていない。

「……誠に幸せでございます」

嘘偽りのない言葉を遠慮気味に言うけれど、真帆はハンッと鼻で笑った。
自分で聞いてきたくせに、私の答えが気に入らなかったみたいだ。
なんて自分勝手なんだろう。それでもその自分勝手さは嫌いじゃない。
この真帆の分かりにくいくらいの優しさに気付ける人は、そうそういない。

「あーぁ、五月女みたいな男、どっかに転がってないかなー? でも私年下は圏外なんだよねぇ。頼れる年上の男がいいわぁ」

ぶつぶつ呟きながらブリをつつく真帆は、誰が見ても可愛い。
大きな瞳に、長い睫。ちゃんと手入れされたネイル。抱きしめたくなる可愛い身長の真帆。
それなのに、見た目と中身のギャップに世の男性はガッカリするらしい。見た目の可愛さに反して、中身が男っぽくてサバサバしている真帆が、私は大好きなんだけど。
誰か彼女の良さが分かって、幸せにしてくれる人が早く現れてくれないかなぁ。
でもそんなことを口にしたら、“リア充め”なんて吐き捨てる真帆が簡単に想像できる。
だから決して口には出さずに心の中で考えて、私はB定食のアジフライに手を付けた。

それを口に入れるか入れないかの時、真帆が視線をよそに向けた。
そして、思わずと言ったように「あ」と、小さな声を出したのだ。
あの真帆に、思わず声を出させるくらい珍しい物でもあったのだろうか。
思わずつられてそちらに視線を移して、私は箸で持っていたアジフライを、ポトリとテーブルの上に落としてしまった。


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