糖度∞%の愛【改訂版】


「かっわいそー」


昨日のことを、いつもの様に昼休みに食堂で、真帆に相談してみた。そして聞いた後の第一声がこれだ。しかもじとっと睨みつけるような眼で、怒りをにじませた声で。


「だって……」

「キスを仕掛けるだけ仕掛けて、その上何も言わないで、あまつさえエッチもお預けだなんて! 五月女君可哀想すぎるー」


反論しようとして、でも言葉を遮られた。なのに、真帆の“可哀想”が指すことを理解した途端思わず「そっち!?」とガラにもなくつっこんでしまった。そんな私を真帆は、鼻で笑う。


「でもさ、何か思ってるって分かってるのに話して貰えないことの方が、ずーっとずっと可哀想だけどね」


そして結局核心をついてくるから、ぐぅの音も出なかった。
ふざけてると思ったあとの、この一撃はキツイ。自分でも分かっていた事だけに、人から指摘されると罪悪感が増す。

私だって彼方や真帆が、何か言いたげにしているのに話して貰えなかったら、切なくなるだろう。どうして自分には話してくれないのか。私はそんなに頼りないのか。話して貰えないほど信頼されていないのか。そう思ってしまうだろう。
なのに私は彼方に話せていない。真帆にはこうやって話せるのに。


「でもさ、今こうなってるのは一昨日のアレが、沙織の中ではネックになってるからでしょう?」


ズバリの指摘に、ただコクリと一つ頷く。けれどふと視線をやった先に見つけてしまった。食堂に入ってきた彼方。その腕には昨日と同じ子がつかまっていた。
私は見ていられなくなって、視線をテーブルへと落とす。ぐっと拳を握って、胸の内に渦巻く感情を堪えた。
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