糖度∞%の愛【改訂版】
「でも、こんな時こそ女の意地を見せるべきでしょ?」
「……え?」
打って変わって何かを思いついたようににやりと笑う真帆。そんな様子に嫌な予感しかしなかった。
「合コンしよう! 合コン! 目には目を浮気には浮気を! そして私に出会いを!」
声高に宣言した真帆は、食べ終えた食器を持ってスクッと立ち上がった。
本当に大声で言ったものだから、周りの視線を独り占めだ。でも真帆はそんなこと気にする様子もなく、返却口へと颯爽と歩いていく。
「ま、待って! それ違う! なんか違う! 私合コンなんて行かないからね!?」
食器を片づけに向かった真帆を追いながら、その背中に向かって言葉を投げる。けれど、聞こえているはずなのに、振り向きもしてくれないし、もちろん立ち止まってもくれない。
その背中に追いつこうと足早に歩いていると、目の前に急に壁が出来た。本当に突然で避けることもできずに、ドンとぶつかってしまう。
い、痛い。 思いっきり鼻ぶつけた。
ぶつけた鼻をおさえて、その壁を見上げる。見上げた先には、不機嫌に顔を歪めた彼方。そしてそのオプションの様に、腕にぶら下がった女の子。
「合コンって、なんですか?」
真帆の声が聞こえていたらしい。真帆の言葉で彼方が怒っているのは分かる。分かるけれど、どうしてその子まで一緒なのかがわからない。
私から言わせれば、“その腕って、なんですか?”だ。
オプションを視界に入れてしまったせいで、彼方の質問に答える気が起きなかった。無言で彼方を避けて、真帆のもとへとむかう。