糖度∞%の愛【改訂版】


「あんた、それを素直に五月女に言えばいいじゃない」

「……言いたいけどさ。私ってそういうこと言うキャラじゃないでしょ」

「確かにね」

「それにその話を言ったとして、そのあと別れ話切り出されたら、本当に立ち直れない気がする」


チビチビお茶を飲みながら言うと、「本当の恋って、ここまで人を変えるのねぇ」なんて、失礼なことを言いながら、真帆はコーヒーを啜った。


今までの彼氏は、自分がのめりこむ前に別れを切り出されてしまうことが常だった。だから正直、別れ話をされても「じゃあ別れようか」とすんなり言えたのだ。
なのに、彼方は最初から違った。告白されたときから、いつもとは違う感情があって。付き合っていくうちにその予感めいた感情通り、どんどん彼方を好きになって。だからこそ今までのような淡白な関係じゃいられない。


今までは、他の女の子と話していようが、腕を組んでいようが、“仲がいいんだな”くらいにしか思わなかった。でも、彼方は違う。


他の子と話さないで。
他の子に触れないで。
笑顔を向けないで……――私だけを見ていて。

そんな醜い独占欲でいっぱいで、私が平常心を保てない。

こういうどうにもならない感情を抱えることこそが、恋をしているってことなんだろう。
そう考えると、好きでもないのに付き合っていた昔の私は、相当ひどいことをしていた。
相手から向けられる“好き”という感情と、真正面から向き合うことすらしていなかったのだから。
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