糖度∞%の愛【改訂版】

ふざけんなっ!
俺がどれだけの想いで、彼女を手に入れたと思ってるんだ。
長い時間をかけて、彼女を理解して、やっと手に入れてたのに。

なのに、……それなのにどうして俺は、こんなことをやってるんだ。

怪我させたのだって、自業自得だと切り捨てればよかったんだ。
そうじゃなくても、沙織に説明をしておけばよかったのだ。

俺一人でどうにかすると言ってしまった手前、何も言い出せなくて。何より大切にしなくちゃならない人を、何より愛しい人を、結局は誰よりも俺が傷つけて不安にさせていた。
前にプライドのために隠そうとした沙織と、同じことをしてるじゃないか。


「……っ、何やってんだよ!俺はっ!」


何もかもちゃんとケリをつけて、その足で沙織のところへ向かうつもりだった。
なのに、決着をつけられても沙織を失ったんじゃ意味がない。

走りながら何度電話をかけてもつながらない。かけながら辿り着いた彼女の部屋は真っ暗だった。何度インターフォンを鳴らしても、中からは物音一つしなかった。

居留守を使っているのか、それともまだ帰っていないのか。
後者であって欲しいと願う俺は、最後の手段に出た。

俺より沙織を理解していて、いつも悔しくなる相手。

憎まれ口をたたくわりに、沙織のことになると協力をしてくれる唯一の人。
アドレスを呼び出して電話をかける。呼び出し音が一回なっただけで、その相手は出た。


『くたばれ』

繋がったと思った瞬間、それだけ吐き捨ててブツリと切られた。

一瞬の出来事だったのに、これ以上ないほどの衝撃を与えてきたのは、他の誰でもない藤城さんだ。
俺に沙織の病気を教えてくれた人であり、目下最大のライバルだと秘かに思っている人物。その人から沙織のことを聞き出す前に、バッサリと切り捨てられてしまった。

しばらく携帯を耳にあてたまま、規則正しい機械音を聞きながら呆然としてしまった。けれど懲りずにもう一度リダイヤル。
本当に頼みの綱は藤城さんしかいないのだから。諦めるわけにはいかない。
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