糖度∞%の愛【改訂版】
「あま……」
普段基本甘いものを極力遠ざけている生活をしているせいだろう。口の中に広がる砂糖の、これでもかってくらいの甘さは気持ち悪い。
「なに? 血糖低いの? 座ったら?」
砂糖を舐めて、しまいにはまんま口に入れたのをみていた真帆が、心配を隠そうともしないで椅子を差し出してくれた。
それに促されるまま座って、机に突っ伏す。
じわじわと、手先に温もりが戻ってくるようだ。手の震えも徐々に収まってきている。
血糖値は低い方だろうけれど、低血糖ではない位じゃないだろうか。
「真帆、ご飯食べに行こう」
「え、うん。 そりゃいいけどまだ……」
何故か言葉を濁す彼女に、まだ仕事が残っているのかと問いかけるけれど、そうじゃないらしい。「違うんだけど……」と煮え切らない返事だ。
いつもズバズバ物事を言う真帆にしては珍しい。
そしてその態度の理由は、向こうから飛び込んできた。
「沙織さん!」
静かなオフィスに響く、場違いなくらい大きな声。
それは私が散々避け続けた声で、今まさにこの状況を作り出した張本人。
真帆は、彼方がここに来るって知っていたのだ。だからこそ食事に行こうと言い出した私に、答えを渋っていたのだろう。
本当に、真帆はいったいどっちの味方なんだろう。
いつも振り回されるけれど、最後には結局感謝してしまうんだから、これも真帆の中では何か理由があってのことなんだろうけど。