糖度∞%の愛【改訂版】

「……離して」


静かにそう訴える。けれど彼方は手の力を緩めようとはしない。


「話をちゃんとしてくれるなら、離します」


ここにきて強気に出る彼方。

どうしてそういう強気な発言をもっと早くにできなかったのか。そう言いたくなるのを堪えて、息を吐く。

今はこんなことしてる場合じゃない。

そしてまっすぐに彼方の視線と向き合った。彼方の顔をこうやって、間近でしかっり見るのも久しぶりかもしれない。


「悪いけど、今ちょっと低血糖気味で早く食事をしたいの。 離してくれる?」


そう言えば彼方は諦めると思った。なのに彼方は腕を離そうとはしない。
それどころか「じゃあ俺も一緒に行きます」と、食事への同行を申し出てきた。

……だから。

どうしてその強引さを最初の段階で出せなかったの?
こうやって追い詰められて、ぎりぎりになるまで何もしなかったくせに。

でも、その言葉すら言えない私は、「勝手にすれば」と、はき捨てて、部署の電気を消した。
彼方の説明を聞きたくないけれど、でも彼方を突き放すこともできないのだ。

あんなことされてもまだ、好きなんだから、彼方以上に私はどうしようもないバカだ。

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