糖度∞%の愛【改訂版】
「でも今日ちゃんとケリつけました。もうかかわることはありません」
「ずいぶんと遅い決着でしたね」
わざと突っかかる言い方をするけれど、彼方はひるまない。
「それは弁解の余地がありません。 ただ自分のプライドを守りたくて、沙織に何も言えなかった自分の弱さです。 そのことで沙織を傷つけてた自分が悪いんだって、十分わかってます。」
「そうね。 そのプライドのおかげで、ずいぶん辛い思いさせていただいたわ、ありがとう」
淡々と言葉を連ねれば、彼方は何かを言おうとしたけれど結局何も言わない。言葉を飲み込んで、ここにきて初めて私から視線をはずして俯いた。
馬鹿ね。
そこで視線をそらさないで、真っ直ぐ私を見て謝れば、許したのに。
どうして彼方は、私の意地っ張りで素直に許せないでいる私の気持ちが分からないんだろう。
……真帆はもう、私の本心を見抜いている。
その証拠に、口に入れたたこわさをふき出さないように、口を押さえて笑いを堪えてるっていうのに。
「沙織……」
「なんですか、五月女君」
「もう、彼方とは、呼んでくれないんですか」
「どうかしらね」
どうして俯いたままなのよ。
今、私はちゃんとまっすぐ彼方を見てるのに。
彼方が視線を上げればすぐに、私とちゃんと視線がからむのに。
それでも彼方は俯いたままだ。