ゴッドネス・ティア
「あー…こいつ怖がりなんだよな…。魔物もダメなのかよ」



横目でル・メイをチラリと見ると、華蓮は仕方がないとでも言うように深く溜息をついた。



「ル・メイ、おまえはここで待ってろ。オレ一人で行ってくるから」


「え…いいの…?……じゃくてダメダメぇ!」



一瞬嬉しそうな顔をしたル・メイだが、すぐ首を横に振った。



「ダメダメ、相手が恐ろしい魔物なら華蓮ちゃん一人じゃムリムリ!あたしも行くよ!」


「…テメェ、オレをナメてんのか?」


「違うもん、心配してんの!」



また二人の喧嘩が始まった。

全く懲りない奴らだ、とサロナは小さく溜息をついて止めに入る。



「あーもう止めろって!行きたいなら行けばいいだろ!あたしは止めたりしたいから!」



サロナの止めで、不満げに渋々身をひいた。

一瞬でも隙があったら襲い掛かりそうな勢いなのだが。



「…あんたら国の騎士様なんだろ?」



騎士様、という言葉に今にも喧嘩を再開しそうな二人は眉をピクリと動かし、反応した。


そんな微妙な表情の二人の押し退けるように、サロナは口端をつりあげて笑む。

元々つっている目が更につって、まるで小悪魔の笑みだ。



「実はあんた等がぐうすか寝てる間、ちょっくら鞄の中身を拝見させてもらった。入ってた銀バッチで国王騎士だってわかったよ。何が目的かは知らないけど、何かあるんだろ?」



そう言って二人の鞄を指差し、唇の間から真っ白な健康的な歯を見せた。



「行きたきゃ行ってきな。止めはしないから。…それより本当に強いのか?」



疑惑の目を二人に向ける。

二人というかル・メイに、というかんじだが…


それに気付いたル・メイは不服そうに顔をしかめた。



「…何よ、あたしが弱そうとでも言いたいの?」



確かに、ル・メイはとても運動が出来そうには見えなかった。



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