ゴッドネス・ティア
「スノーぉリアー…」
「……………何だ」
怠そうに自分の名を呼んだレオナに彼はめんどくさそうに答えた。
「『メルスの墓』に行くのには、橋を渡らないといけねーんだろ?」
「ああ、そうだ」
「じゃあさ、じゃあさ、橋っつーことは水が流れてるって事だよな?」
「…そうだな」
「んじゃ、少し休んでいいか?俺喉かわいた」
「…勝手にしろ」
一言、二言の会話を終えるといつものように重い沈黙が流れる。
後ろで仲よさ気に会話にをしているヒサノとアランの声だけが耳に響いていた。
スノーリアとの会話はなかなか続かない。
とくに暑いわけでもないのに、嫌な汗が額を滴り落ち、手で拭うと…
ふと、道の少し先にある草村に目が止まった。
「…あれ?」
「どうしたんですかレオナ?」
アランとの会話を打ち切り、レオナの傍へ寄り、不思議そうに見上げるヒサノに、レオナは草村を指差した。
「なんか今動いたような…」
「…ぇえっ」
そう、動いたのだ。
レオナの視力が正しければだが、草村は微かに動いたのだ。
「ど、どこですか…?」
「ほら、あそこ…」
レオナの半分程しかない視力で目をこらし、眉間を寄せて草村を見るのでかなり人相が悪く見えるヒサノ。
綺麗な顔が台なしだ。
「あ、本当だ、今微かに動きましたよ!」
「魔物か?」
やっとこさ見合てたヒサノはスノーリアを振り返り、スノーリアは深刻そうになんとも物騒な生き物の名前を吐いた。
この世界、ルナではあまり魔物というものは存在しない。
たまに道外れからヒョッコリ顔を出して生き物を喰らって行くが、極たまにだ。
魔物といっても悪魔の配下やら、悪の組織の仲間というわけではなく、ちょっとかわった特色をもつ生き物を魔物と呼んでいる。