ゴッドネス・ティア
「あーら、気が強いんだな、華蓮ちゃん?」



背後から、あの声がした。



「………チッ、くそ…」



見ると、罰当たりなことにメルスの墓に片足を乗せて座っている。


男はニヤリと笑みを浮かべ、余裕こいて、女が羨ましくて刺し殺してしまいそうな程、サラサラ流れる淡い紫色の髪をかきあげた。



「…スー・チャンか」



思ったとおり、ファンから聞いたとおりの奴が出てきた。


あのサラサラヘアは、女として許せない。



「へぇ、俺の名前知ってんだ。俺はアンタ知らないけど」



「当たり前だ、初対面だからな。
お前のことはファン様から連絡をうけている。ファン様の使いと面識があるだろう?」



華蓮は勝ったと言わんばかりに口端をつりあげた。


だがその反面、背中から流れる血はとどまる傾向を見せない。



「ふ〜ん…ま、いいけど」



華蓮の得意げな表情にムッとしながら、結界が張ってあるはずの涙の石を 軽々と墓石から取り上げた。



「くそ…あんたが結界の犯人か、…スー・チャン」



結界は張った者しか破ることは出来ない。


スーが軽々と涙の石を取ったということは、その犯人だということだ。



「そうだよ、取るのは簡単だったけど…遊びたくてね。
俺と遊んでよ、ル・メイと華蓮ちゃん?」



スーは余裕しゃくしゃくでにんまりと不気味に笑う。


それと同時に華蓮の背中の傷口から、血がドッと吹き出た。



「ぐっ!!」



「華蓮ちゃん!!」



痛みでふらついた華蓮の体を支えるル・メイ。


自分は介護されるバーチャンか、という思いが脳裏を過ぎるが、激しい痛みに瞬時に消えた。



「ル・メイ…行くぞ…」



「行くぞって…この体で?!」



「ああ、…まだイケる」



いやイケねえだろ、というル・メイの言葉を無視して腰にさしてある刀で体を支えた。


ル・メイの介護なんてうけるか、という意味不明な行動である。





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