ゴッドネス・ティア
しばらくして、馬車を村から少し離れた場所に置いた一行は、ケルサニオスへの道を歩んでいた。

そして、現在はもうケルサニオスの村の門の前まで来ている。


いつもはここからでも陽気な村人達の笑い声、歌声、などが聞こえてくるが、今はそんなものは聞こえず、ただただ門の中からもくもくと煙のような霧のようなよくわからない気体が溢れ出していた。


そんな暗い雰囲気に一行のテンションもがた落ちである。



「こりゃ紫の霧だな…」


「辺りが見えなくて危険だ…、気をつけろ」



霧のように当たりが微妙に見えないので、困った表情で門を見据えるレオナに注意を促すスノーリア。



「はぁ…まず入るしかないだろうな」


「うえ〜…リュンマこんなとこ嫌いなのにぃ〜」


「リュンマうるさい。レオナも明らかに嫌そうな顔すんな!」



物ぐさ二名が嫌そうに顔を歪めるのをリーダー香月は厳しく叱り付ける。

「はーい」と怠そうな返事を返す二人は顔を見合わせて肩をすくめた。



「この霧のようなもの…毒なんですよね…」


「……そうみたいだね…」



忌ま忌ましそうに霧をすくうように仰ぐヒサノにアランは門を見据えたまま答えた。

その肩は小刻みにカタカタ震えている。


その肩にぽんっと優しく白く細い手が置かれた。

ビクッと肩が跳びはねる。



「大丈夫ですか?」


「あ、………シャラン…」



白く細い手の持ち主が心配そうにアラン眉をひそめる。

肩に置かれた手はほんのり温かい。


その温かさと共に、アランは笑顔を見せた。



「村の人達が心配なんだ。僕は大丈夫!」


「………本当ですか?」



何故疑われるのかは疑問だが、それは彼女が心配してくれているからだ。



「大丈夫だから…ホントだよ」



アランは先程よりも明るく、微笑んだ。



「そうですか……ならよかったです」



アランの微笑みつられるようにシャランも微かに微笑んだ。




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