ゴッドネス・ティア
「私は先程お願いがあると言いましたよね?
ヒサノ、あなたは分かりますよね?」



ファンの顔がヒサノへ向く。

目が見えていないはずなのに分かるのだろうか?


レオナとアランの視線はファンにつられてヒサノへ移動した。



「ぇ……と…………?」



戸惑いの笑みをレオナに向ける。


何故、俺を見る…?


ヒサノはごまかすようにヘラッと笑った。



「すみません…」

「そうですか…それは残念です」



ファンのその言葉は傷口に塩を塗ったように追い撃ちをかける。


ヒサノは今まで見たことない青ざめた顔になり、ガクリと肩を落とした。



「…でさ、何だよ。
俺達に何の願いがあるってんだ?」



段々めんどくさくなり、ついタメ口を使うレオナに、またヒサノの冷たい眼光が向いたのは言うまでもない。



「え…っと、何の願いですか…?」



正しく言い直すとふっと眼光が消えた。

どうやら、『裏ヒサノ』というものだったらしい。



「それでは…まず、…レオナ。
あなたはたしか剣術を身につけていましたよね?」



ピクリと体が反応する。

……なんでそんなこと知ってんだ。



「あなたの父、クラウス・オラトーレは十年前の大戦争で活躍した『国王国家男五大騎士団』の一員だった…。
クラウスの姉も『教皇国家五大騎士団』に所属していた。
そうですよね?」



自分の眉間にシワが寄るのがわかる。

拳を握る力が強まった。


『国王国家男五大騎士団』とは、国の為に戦い、国の為に血を流し、国の為に全てを捧げ、我らは国の為にあると誓うリリオの絶対的な軍事機関の一つだ。


五大騎士は男と女で別れており、女の場合『国王国家女五大騎士団』と呼ばれる。


そして、『教皇国家五大騎士団』は各州の聖地に所属し、その場を守護する騎士団だ。


因みに全員女。


何故、ファンは自分の父と叔母のことを知っているのかとレオナは疑問に思った。



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