ゴッドネス・ティア
トテトテと少年らしい小さな足音と共に馬車内に鞄を見に入って行くアランを見届けた後、レオナはリンへと視線を移した。

その表情は相変わらず余裕そうで口元に笑みが張り付いている。


だが、その額にはやはり汗が。

余裕そうな表情のわりにくるくると自分の髪を弄んでいた指は止まっているし。

微かにだが眉が寄っている。


レオナにはそれが相当焦っているように見えた。

そんなことを考えていると、馬車の扉が開いた。

アランが帰ってくると思ったが、扉から出てきたのは予想外の物だった。



「ないないないないナイナイナイナイ内々内々NAINAI!!」



まず聞こえてきたのは意味のわからない、いやわかるがなんのことだかわからない、悲鳴に近いアランの焦ったような声。

それと共に飛び出してくるのはアラン専用の歯ブラシ、コップ、筆記用具、目覚まし時計、パジャマ…


おまけに"宝物箱"と子供っぽい少し歪んだ油性ペンの字で書かれたアルミの箱。

宝物箱と書かれて気になって仕方がないが、ぐっと堪える。



「なーーーーーーーーーーーーいっっ!!」



宝物箱に目を奪われていると、扉を荒くを叩く音と共に視線を扉に移す。

…息を荒くしたアランが鬼の形相で立っていた。


…………かなり怒っている。

いや、かなりでは言い表せない。


めっちゃ、いや、めちゃくちゃ腹を起てているせいか、アランの背後にどす黒いオーラのような物を見た気がした。



< 190 / 506 >

この作品をシェア

pagetop