ゴッドネス・ティア
「陽深〜〜〜!ウィルがいじめるぞー!!」


「わあっ!」



いきなり喚きだしたかと思ったら、座り込んでいるまた一人の男に突進。


壁に背中を預けて寝かけていた陽深とよばれた男は驚いて悲鳴をあげる。


陽深のクリーム色のセミロングが宙に舞うのを見届けてウィルはまた溜息をついた。



「いつ僕がいじめたんだよ。レイのただの被害妄想でしょ?」


「ほら!聞いたろ?聞いたよな?陽深お聞きになられました〜?!」


「う、うん!きき、聞いてるよ!聞いてるから服離してくれないかな〜〜〜!」



レイとあまり大差ない身長を誇る陽深はその大柄な身長に合わず、細くひょろっこい。


軽く揺さぶっても大袈裟にがくがくと首が落ちそう。


その平和ボケしたようなのほほんとした顔付きが苦悩の表情に変わるのを見て、ウィルは堪らず小悪魔の笑みをもらした。



「うるさいな…少しは静かにできないのか?」



男四人がワーワーギャーギャー騒いでいるなか、ゆっくりと落ち着いた厳しい声が響く。


その威厳のある声で辺りは一瞬で沈黙を取り戻した。



「まったく…貴様等には緊張感というものがないのか?」



呆れた、というように溜息をつくのは、四人から一人外れて部屋の隅に座っている小さな少年。


このメンバーの中で唯一ウィルが見下ろせる相手だ。


険しい表情をよりいっそう歪ませて四人を睨み、左の額から目を通り顎にかけての長い傷がひきつる。



「あ、ゴメーン!僕ム・ルカみたいに緊張しないから騒がしいかな?
でも元を辿れば原因はレイだよね?
一発殴っちゃっていいよ?リーダーの僕が許す」


「そーそー殴っちゃって……って、ぅおおい!!」



今にいたってやっと見せたウィルの満面の笑みは天使の姿をした悪魔の微笑み。


とばっちりをうけそうなレイは焦ってウィル、ム・ルカを交互に見る。



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