ゴッドネス・ティア
「嫌だー！ム・ルカの鉄拳は痛いんだよー！！
ウィルのバカヤロウ！！」


「わ、わかったから静かにしてくれ…！」



ム・ルカの鉄拳がくると覚悟したレイは悲しみにくれだした。


その通りやすい声は馬車内にも、外にもバリバリ響く。


ム・ルカは欝陶しいと顔を歪ませた後、溜息をついて宥めるようになるべくきつくない口調でレイに懇願した。


うるさいのはかなわない。


せっかくだからこの馬車の時間くらいはゆっくりさせてほしい、これから更にうるさい奴らに会いに行くというのに。



「こんな冷たい奴らはもう知らない！俺はお前等なんか興味ない！俺はリュンマ一筋なんだから！」


「知ってるし、それに僕達に興味があるだなんて気持ち悪すぎて考えたくもないよ」



またしてもワーワーと喚きながら愛しい愛しい女性の名を口にするレイに又してもウィルの毒舌。


リュンマ…、それは他の四人にとっても聞き慣れた名前。


その名を久しぶりに耳にして、懐かしさと苛立ちさの両方が込み上げてきたとか。



「…そういやリュンマ、久しぶりだなー」


「何、真琴。華蓮に会いたくなったの？」


ふとレイの愛しい女性の名を呟くと、隣の陽深がまた聞き慣れた彼女の名を口にする、前に華蓮のかの字で真琴の顔は耳まで赤色に。



「だ、だまれ陽深っ！別に俺は華蓮のことなんか…！」


「え、幼なじみじゃないの？久しぶりに会いたいかなって思ったんだけど…」


「お、幼なじみ…っ」



耳まで赤くなりまるで林檎のように熟されていく真琴の顔。


陽深はその意味を全くわかっていなかった。





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