ゴッドネス・ティア
「サロナ様って誰…?」


「この村の長だ。
貴様は誰だ」



聞き慣れない人名に首を傾げるレオナに素早く答え、直ぐさま視線を青年に戻すスノーリア。


その鋭い眼光に青年はびくっと肩を震わせ、目が合わないように帽子を深く被り直した。



「ま、まずはあなた方が何者か教えて下さらねばお答えできません…っ」



震える体を必死に抑え、つっかえながらも震えた声で言い切った。

まるで極寒の地にいるような仕種にプッと小さくリュンマが吹き出す。

そんな小さな音にもいちいち反応するびくつく肩を軽く叩く青年。

スノーリアは小さく息をつき、青年に向き直る。



「我々は教会からの使いだ。
森に入るための許可がほしい。
長に会わせてくれ」



代表者スノーリアがそう言うと、先程まで尋常でないほどガタブル震えていた青年の全てが止まった。


焦げ茶色の瞳をパチクリと見開き、ぱくぱくと唇を動かす。



「教会の使いって…あのバンクロフト教会の…ですか?」


「ああ、バンクロフト教会最高位兼教皇であるファン様の使いだ。
いろいろと事情がある。長に会わせてくれ」



スノーリアは深く頷き、教会関係者の証である金バッチを見せる。


青年はそれを見ると目が零れ落ちるんじゃないかと思うくらい見開き、食い入るように見つめた。


瞬間、青年の表情がまるで朝日のように明るくなる。


先程までの幸薄そうな表情は今はどこにも見当たらない。



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