ゴッドネス・ティア
そう、あいつは自分が殺した。


何十年も前に、自分を裏切ったあいつを…


ああ、思い出しただけで腹が立つ。



「………殺した?」



怪訝そうに顔をしかめるスー。

剣をくるくると振り回す腕がピタリと止まる。



「ああそうさ。何十年も前に、あたしがあいつを殺した…
おまえが今ここで石を狙っているのはあいつからの頼みか?
死んだあいつの…」



今でも鮮明に覚えているあの情景。

あいつの血が辺りに飛び散り、赤い水溜まりをつくった。

……殺してやった。


サロナの笑みにはだんだんと憎悪が浮かぶ。


憎い憎い憎い憎い憎い憎い………


自分を裏切ったあいつが、憎くてたまらなかった。



「おまえのその力…あいつの匂いがする。
その力があたしの憎悪を膨らませるんだ…。
もう一度、殺してやりたいってね…」



ゾクリ…


スーは突然の悪寒に顔を歪めた。

どうやらこの魔女は相当この力が嫌いらしい。


自分に放ってくる殺気がこれでもかってぐらいに空気を伝って肌を攻撃する。


なんなんだ…この殺気は…


さっき潰してやったちょろまか動く女より…国王騎士より鋭い。


あのナイフとか使っていた憎い女は、ここまでじゃなかった。




……さすがに百年も生きている魔女だけある。




< 225 / 506 >

この作品をシェア

pagetop