ゴッドネス・ティア
「リリオ国王は全て私に任せると言ってくださいました。
その日、私は夢を見たのです。
夢にしてはハッキリしてて…その中に見えたのが幸せそうに笑う赤い髪の小さな少年と同じ髪色の女性」



巫女の脳裏に一人の少年が浮かんだ。



「赤い髪…?!」



赤い髪といったら彼しかいない。



「レオナ・オラトーレ…?」

「そう、レオナでした。
まだ幼くて、無邪気な笑顔でした。…今では面影すら無いですが。
女性は母親のアメリスだと思います。
そして、二人の笑顔をハッキリと見た時、私は直感的にこのこだと思ったのです」

「…理由は?」

「そんなものありません。
私がそう思ったんです。」



ファンには迷い等無い。


なぜなら思い立ったらまわりを全く見ない人だから。


巫女は呆れたように深い溜息をついた。



「なんてことを…世界の命運がかかっているのですよ?」

「わかっていますよ。
だからお願いしたのです。
あの子ならきっとやってくれる…。
ですが、さすがに一人じゃキツイので仲の良い二人を同行させたのです。」

「…あ、あなたの自信は何処からくるんですか?!
危険な旅にあんな子供を…」



とうとう声を荒げた。


だが、言葉の最中にファンが手を軽く上げる。


巫女はそれだけで口を開くのをやめた。


教会最高位の地位がどれだけ高いのかがわかる。



「私だって馬鹿じゃありません。
きちんと準備をしています。」

「……………………」



何か言いたそうだが、必死に堪える。



「昔、私の護衛をして下さった方がいます。
その方にもついて行くようにと命令しました。
………なんですか、その目は…。」



ファンには見えてはいないのだが、気配でわかるのだろうか、巫女は不安げな目でファンを見ていたのであった。


さっきの椅子の場所といい、凄い人だ。



「大丈夫ですよ、常識のあるきちんとした大人の方です。
信用できます」

「…そうですか、それはよかったです」



ホッと胸を撫で下ろした。



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