ゴッドネス・ティア
声をかけると、やつはノックをしようとする手を止めた。


しばらく間が空き、息を吸う音が聞こえる。










「………久しぶり、だね」


その言い方から察すると、彼は微笑んでいるのだろう。

だが、一向にドアを開く気配がないので、ソフィアは痺れを切らしてゆっくりとドアを開いた。



「なーに、そんなとこでぼーっとしてんだ!中に入るんならさっさと入んな!!」



面会して早々大きな声を出すソフィアに目をパチクリとさせる男。

だがすぐにいつもの笑みを見せるソフィアを見て、安心したような穏やかな笑みを見せた。



「…………うん」























「10年ぶりだな、元気だった?」


「まあね、一応元気にはしてたよ」



突然の訪問者に、ソフィアは珍しくニコニコしながらお茶を差し出した。

どうも、と会釈をしながら彼女らしいシンプルなティーカップを受け取る。


煎れたてのお茶を冷ましもせずに口に運び、アチチッと舌を火傷するどこかヌケたところ…全くかわっていない。


剣ダコのできた、華奢なくせに大きく骨張った手も、

ツンツンと四方八方に跳ねる茶色い髪も、

その芯のある熱い眼差しも……


……何も、変わってない。


多少髪がのびてしまったのか、その長い髪を後ろに緩く結っているが、



それ以外、あれから10年もたったのに、それを考えさせないくらい…




(―――本当に昔から変わりないな…)


自然に笑みが漏れた。



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