ゴッドネス・ティア
「で、あんたはここに何しに来たんだ?」


「んー…?」



ソフィアの質問に男はお茶を口に運びながら首を傾げた。

しばらくして、ああ…、と頷き、ティーカップを置く。

そして、ソフィアをしっかりと見据え、朗らかな笑みをつくった。



「とくに用はないよ、ただの里帰り」


「…………里帰り?」


「ああ、それと……」



ソフィアから視線を外し、この部屋にあるたった一つのシンプルなデザインの机に目を向けた。


机には、赤い髪の…まだ五歳程の小さな男の子と、今よりいくらか若いソフィアが微妙な距離を保って写っいる写真が飾ってあった。

男の子は複雑そうな表情でそっぽを向いているが、ソフィアは少し離れた距離から暖かい視線を男の子に送っている。


その写真を見て、男は自然に笑みを漏らした。

ゆっくりとソフィアを振り返り、満面の笑みを見せる。



「愛しの息子に会いに来たんだ」



息子がいたらさぞかし全身が痒くなるような感覚に襲われるであろうその言い草。


そんなことも恥ずかしがりもせずにこやかに言う父親は………昔から本当に変わらない。


そんな男に思わずソフィアは苦笑いを浮かべた。



「……全く変わりないなあんたは…」


「そう?そういうソフィアも相変わらずアメリスにそっくりだ」


「………そういうところはさ…もっと女性を扱うような嬉しい言葉にしてくれないかな?」



たとえば綺麗だねとか、とソフィアが口にすればただただ苦笑いを浮かべる男の姿が目に入り、正直腹が立った。


こいつは嘘のつけない性格だ、すぐに顔に出るんだから…。



「ソフィアは綺麗だけど……なんかこう……ね?」


「なんだなんだ!はっきりと言いやがれ!腹が立つ!!」



そう言ってけたたましい音を起てて椅子を蹴り倒すソフィアはお世辞といえど、………綺麗とは言いづらい…。



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