ゴッドネス・ティア
「じゃあ…レオナはもう……泣き虫レオナじゃないのかい?」


「んーー…」



父親の欝陶しい質問に苛立ちながらも過去の記憶を蘇らせるソフィア。

そんなソフィアが、一瞬悲しそうな顔をしたような気がした。



「……一回ね、一年前に大泣きしたんだ…。あれ依頼…泣いたところは見てないなぁ…」


「……………ソフィア…?」



彼女の意味ありげな表情に男は眉を寄せた。

しかし、その聞きたい気持ちを抑えてその話題には触れなかった。


触れてはいけない、そんな気がしたから…。

そんな心情に気付かれたのか、ソフィアは慌てて笑顔をつくった。



「でも最近はもう全く泣かないんだ。まったく…、おもしろくなくなったよ」



その意地悪げな笑みを見て、男もつられて笑みをつくる。



「そうかー……………アメリスにそっくりか?」



少し間を空けて聞いてきた男の顔は……やや赤い。

その初恋をしているような初々しい顔を見て、ソフィアは呆れたように溜息をついた。



「まあ…似てるのかな?
昔はアメリスに似てると思ってたけど……今じゃあんたそっくりだ、最近そう思って来た」



いつのまにか立ち上がっていた自分達に気付き、椅子に座り直しながら男に席をすすめる。

男は静かに座り直した。


そして、ふと何か思い出したのか、そういえば…、とティーカップを取りかけた手を止めた。

男はそれを不思議そうに見て、首を傾げる。



「レオナが旅に出た少し後ぐらいに…久しぶりにスノーリアを見た。話していないしあっちはあたしに気付かなかったけどね」


「…なんだって!?」



ガタンッと音を起てて男が立ち上がった。

その反動でティーカップの中のお茶が微かに揺れる。


爛々と輝く瞳にソフィアを映し、その目はなんだか嬉しそう。



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