ゴッドネス・ティア
半場レオナを引きずりながら、ヒサノは村の大通りを大股で歩いていた。


強引なヒサノの力強い腕をいやいやと振りほどこうとするレオナのことなんか知ったこっちゃない。



「ヒサノぉ、手ぇ痛い〜〜」


「うるさいわね、引っ張ってあげてるんだから感謝しなさいよ」


「別に引っ張らなくていいよ〜…」



ヒサノの相変わらず冷たい言葉と態度に涙ぐんでいく血でできたガラス玉のような赤い目。


だが、その赤をさらに上回る彼の頭を何かがゴッと嫌な音をたてて弾いた。


傍から見ても相当痛そうな音の後に、ヒサノの頬を掠めるようにビー玉サイズの小石が地面に転がった。


今まで以上に顔をしかめたヒサノが背後を振り返ると、瞳に今にも零れ落ちそうな涙を溜めたレオナと、そのまた数歩後ろに…自分達と同じ年代であろう五、六人の子供達を従えたがっちりとした体格の男の子が仁王立ちで踏ん反り返っていた。


男の子はそのお世辞でもかっこいいとは思えない顔に、意地悪げに笑みを浮かべる。



「おーいレオナ、泣き虫レオナちゃん♪
今日も女の子を引き連れて楽しくやってんのか〜?」


「…………ジャン…」



その男の子とは、この村でがき大将面をしているこの年代のなかでは一番大きい体格のジャンだった。


いつも口元にはニヒルな笑みを浮かべ、気に入らない、もしくはからかっておもしろいらしいレオナなどを見つけては嫌がらせをしてくる嫌な奴である。


ヒサノの中ではそうインプットされているのだった。



「あんたまた何しに来たの?そろそろ飽きないわけ?」



ジャンに気付いてまたさらに涙ぐんで肩を震わせているレオナを尻目に、ヒサノは大袈裟に溜息をついた。






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