ゴッドネス・ティア
「ほら入ろう、濡れちゃうよ」

「はい」



肩にかけていたポニーテールをはらい、車内に入った。

少し遅れてリュンマも入ってくる。


車内にはいつも通りの風景があった。

奥の壁に怠そうにもたれている女は自分達のリーダーである藍・香月だ。

いつもと同じように疲れきって眠そうな表情をしているがどこか凛とした雰囲気がある。


明るい橙色のベリーショートヘアの額にバンダナとも言えなくもない白い布を結び、いつも引っ張ってみたいなという思いにかられるが、そこは我慢。


その近くの壁の隅で小さく縮こまってるのは華蓮と犬猿関係のル・メイだ。

まだ、口先を尖らせてはぶてたようにそっぽを向いている。


そのル・メイに溜息ながらに近づいた。

それに気がついたのか微かに顔を強張らせるル・メイ。

その表情に少しムッとするが、必死に感情を押し殺す。


自分が書いた手紙をル・メイに渡し、さっさと窓辺で空をぼうっと見上げている後輩であるシャランの元へ駆け寄った。

ル・メイは少し躊躇いながら手紙を受け取ると手紙を開く。


読んだ瞬間ル・メイの表情がパアッと明るくなる。


華蓮はさっさと後輩の元へ行ったというのに二ッコニッコとご機嫌だ。

これが二人の仲直りの方法なのだ。



「こーうげーつー!『メルスの墓』まで後どのくらいかかる?」



鼻につく甘い声で香月に寄り添うリュンマ。

そんなリュンマに、香月は欝陶しげに顔をしかめた。



「この先に橋がある。その先だ、あと二日だな…」


「二日かあ、暇だね!雨だしー」


「そうだな……………………わっ!」



くんっ、と何かに頭をバンダナを強く引かれ、香月は小さく悲鳴をあげた。



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